窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

京塚さんと小雁さん

今日は少し暖かになった。公園を通る人達はゆっくりとした足取りで、橋にたたずんで池を見ている人もいる。このところは寒かったせいか通る人も急ぎ足だったのだ。


橋の上には京塚さんと小雁さんもいた。

京塚さんは橋の欄干に乗って池を見るのが好きなのだ。でもなんだか顔がクシャクシャしているので、顔を見ただけでは嬉しいんだか何だかわからない。
久しぶりに話しかけた私が「私の所の猫は18歳になります。」と言うと、小雁さんは「これは16歳、おばさんだ」と答えた。(2年くらい前も16歳と言っていた気がするのだが)
私が人さし指をそっと差し出すと、京塚さんは社交辞令のように額をを少し寄せた。

橋の下からカモのつがいが泳ぎ出てきたので、京塚さんはまたゆっくりと池の方に頭を向けた。
マガモは数日前は固まったまま浮いていたふうだったのに、今日は解凍されたようにスイスイと泳いでいた。