窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

池の桜はもうとうに散って、柔らかそうな葉っぱに覆われている。今年はバタバタと暖かくなって、知らないうちに土筆はなくなりスギナが丈を伸ばしていた。
少し前から鴨の姿は見えたり見えなかったりで、当面はここを餌場と決めたらしいチュウサギだけが白くて細い首を伸ばして、水面の獲物を辛抱強くのぞき込んでいる。
朝はあまり人がいない。橋のベンチに座った若い男が池を見ているだけだ。