窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

紙漉き

久しぶりに紙漉き。今回は版画用紙からではなくて、原材料から。
引っ越す前に、庭に植えていたクワ科の木(多分カジノキ)は、挿し木をして今の家の軒下に植えたのだけれど、実はすでに同じような木が植わっていたので、小躍りして採集したのだった。が、日当たりが悪いせいか成長が悪くて、2シーズンくらいでもあまり取れなかったけれど、押し入れにの袋に入れっぱなしにしてあった前のものと併せるとそこそこの量になったので紙漉きをすることにした。
(下の写真はクリックすると大きくなります)



以前は庭に七輪を置き、その上に鍋を乗せて何時間も煮ていたのだけれど、今は住宅地なのでそんなこともできないからストーブで。このストーブは熱が皆上に行ってしまうので、上で扇風機を回していないとなかなか暖まらないのだけれど、煮物には重宝する。それで鍋を乗せればけっこう早くに柔らかくなる。
このクワ科の木は元々それほど色は出ないのだけれど、今回使っているものは、そういえば去年の冬は外で水にさらしたままにして、凍ったり溶かしたり、干したり、と適当に気の向くままに、つまりはほったらかしにして、乾燥したものをしまっておいたせいか殆ど気にならない色合い。



煮ながら残っている皮を剥がして取り除く。これが一番面倒だ。皮をきれいに取り除けば、それだけきれいな紙になるけれど、まあ私の場合そこそこ。去年晒していたりした時にも、気が向くと水にふやけた皮を取ったりしていたので、今回はあまりついていない。ということにして、それでも4時間くらいかけて取った。なかなか柔らかくならないので重曹を入れてみた。効果があるかは不明。前は木灰や薬局で苛性ソーダを買ってきて(劇物指定だったと思う)柔らかくし、木灰の時は庭で木を焼いて作っていたものだった。周りが畑だらけだったからできたのだ。まあ、重曹でもアルカリ系だし、と。そう思って気長に煮ていると柔らかくなってきた気もする。



とろろ昆布状態になった原料を、ミキサーで砕いて漉いた。
漉き枠は手製のもの。写真はない。キャンバスの枠2枚を蝶番でつけて、間に金網を挟んで漉き枠を作った。金網は普通の針金で編んだものだと、ベニヤ板に貼りつけて乾かすときに紙の繊維が絡まってしまってうまく取れないので、ステンレスのメッシュの板状になっている網を使用したのだった。貼り付けるときには、ゴムのへらで水をしごき取るようにして貼り付ける。以上が所沢時代にヒロエさんと共に試行錯誤して編み出した、紙漉きの方法なのだ。




乾いてくると白くなってくる。漂白剤は入れていないから、生成り色。やはり皮や枝の細かいものが混じっていて、ブツブツしている。アバウトな私としては、まあこんなもんで。





木版でおためし。
2シーズンで30枚。いと効率悪し。