窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

引っ越し

そんなわけで、8月半ばから9月の半ばまで、私はダルダルとしながら過ごしていたのだけれど、9月に入ってからアーニャ一家はどこかへ引っ越していってしまった。朝から夕方まで縁側や軒下にいた仔猫3匹とアーニャは、2週間以上経つけれど姿形もない。先日、一件おいた家のお婆さんに会ったので尋ねてみたけれど、これまで毎夕方来ていたけれど、やはり全く来なくなってしまったという。

アーニャ一家がいなくなる前に、もうなんだかボロボロになっているギイヤンとガタイが良いことを鼻にかけ始めたようなタロウが頻繁に軒下に来るようになり、アーニャ一家に文句を言っていた。その度に仔猫達は固まっていたので、おそらくそのせいでアーニャは仔猫を連れて引っ越してしまったのではないかと思う。湿疹が出た時に、どこかの家で頭に軟膏を付けてもらっていたアーニャ。手術もしてあるのだし、どこかで可愛がってもらっていると良いのだが。

そしてその後は軒下には雄猫3匹がニアミスをしながら徘徊していたのだが、今日は全員がかち合ってしまった。
3匹というのは、ギイヤンとタロウ、そして今年に入ってデカオをやっつけたボブだ。




ボブです。ちょっとボブカットなんです。



ボブは春先にデカオを追い払っただけあって、かなりの重量級。タロウやギイヤンとは違ってアーニャ一家には優しく接していたようだが、一応タロウ達のほうが先にいたので、私はボブにはつれない。

今日はタロウが一番乗りをしていた所へ、皮膚病気味でボロボロになったギイヤンがやってきた。するとタロウがギイヤンを威嚇し始めた。とたんにものすごく意地の悪い顔になったタロウ。兄弟であんなに仲が良かったのに。私は悲しい。
ギイヤンがぺったんこになって既に負けの姿勢をしているにもかかわらず、タロウが飛びかかろうとするので、私は紙漉き用においてあった箱を二匹の間におもむろに置いた。
急にギイヤンの姿が見えなくなったので、とがっていたタロウはびっくりしてキョロキョロしている。箱の影になっているとはわからないらしい。タロウって、オバカサン?その隙にギイヤンは安全地帯へ。

そして夜になって、ボブが登場し、軒下で大げんかが始まった。。私が出ていこうと、水をかけようと止めない。
ガッ。と、爪が食い込むような音。ウガッ。と、かみつくような音。二匹とも同じくらいの大きさだから、負けてない。
植木鉢はひっくり返るは、箒は倒れるは、大騒ぎだ。
ようやく二匹が離れて、とんがりながらも家の前の道路に出てにらみ合っている所へ、お散歩の犬が通ったので、ボブは通りの向こうに消えていき、タロウは肩で息をして仁王立ちになっていた。

タロウが軒下に戻ってきたので調べてみたが、どこもケガをした様子はない。タロウは強いのかなあ。一件おいた家のお婆さんは、タロウのことを「ボス」と呼んでいるというのだが、まあとりあえず名前負けはしていないということなのか。