窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

猫さん

佐野さんからのメールに新しい猫の話が書いてあった。私の所の猫と同じ模様(つまり賢治の「猫の事務所」の竃猫)の外猫が、子供を産んだという話。その猫はまだ子猫だったのに元気な子を4匹も産んだのだ。いや、めでたい。そうして、その猫の母猫もまた何匹か産んで連れてきたということで、大変複雑な家族構成になったようだ。
私は自分の猫は1匹。これまでもそうだった。実家には私の知らない猫が何匹も増えていたことがあったけれど、私が自分の猫として面倒を見ているのは1匹だけだ。理由は手が回らないからである。しかし猫にとってそれがどういうものなのか・・・。家の猫は外に出さなくなってから、私に妙に話しかけてくるようになった。
子猫の頃からよく鳴く子で声もびっくりするほど大きかった。だから私が見つけて拾ったわけだけれど、一緒に暮らすようになってからも、あまりに鳴くから捨てられたのではないかと思うほどうるさくて、その上私と佐野さん以外には懐かなかった。当時は、捨てられた記憶があるからなのかとも思っていたし、実際大病をして長期入院を終えてからは、病院でよくしてもらったおかげでフレンドリーな猫に変わり、友人達にも愛想を振りまくようになった。
しかし、私が家で仕事をするようになり、猫も外へ出さなくなってからは、徐々に態度が変わってきたように思う。私を人だと思っていないのかもしれない。私の行動に対しての文句が多いのだ。例えば私が庭に出ると、起きてきて窓のそばにへばりついて見ている。私が一人でいるときは良いのだけれど、近所の人と話を始めると部屋に戻るまで鳴いている。部屋に戻ったからと言って甘えてくるわけでもなく、「ヨシ。」という顔でまた寝はじめる。なんだか時々口うるさいオッサンと暮らしているような気がする。いや、猫は雌なのだけれど、顔が怖いので。