窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

気弱なグレーハウンド

実家の猫の具合が悪いというので、いつもの動物病院へ連れていった。待合室にグレーハウンドの子供がいた。子供といっても、普通の大型犬位の大きさだ。耳をカットしたばかりで、上に持ち上げて結んである。耳をカットして発熱をしているというせいなのか、なんだかぐったりとして、心細げだ。他の犬や猫達を、不安そうに見てはため息をついている。飼い主にぴったりと寄り添って、どこかのくぼみを見つけては鼻先をくっつけて、落ち着こうとしている。いいなあ、グレーハウンド。もっと気の荒い犬かと思っていたがとても愛らしい。涎が少し気になるけれど。
実家の猫の症状は高齢によるものということで大事なく実家に引き渡して家に帰ったら、ご飯もやらずに出てきたため家の猫がたいそう怒っていた。帰ってすぐに私はそれまで着ていた服を洗濯機に放り込んだのだが、やはり他所の猫の匂いがするせいなのかもしれない。怒りながら私の足に爪を立てて上ろうとする。叱ると、フンと鼻息を荒くして私を睨んでいる。グレーハウンドよりも怖い顔だ。まゆ毛がくっきりとしているせいだ。