窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

kamaneko2004-03-30

私の住む町には画材店がなくて、急に何か入り用になったときには本当に困る。営業しているのかしていないのかわからないような、小さな店が1件だけあるのだけれど、品ぞろえは少なくておそらく在庫を一掃したら閉めるのではないかと思われる。それでも今日は仕方なくその店に行った。あらかじめ電話で商品を確認して行ったので、用は足りた。
その店は、もう殆どが閉めてしまったような商店街の外れにあり、そこを過ぎると病院街に入る。病院には桜が多い。眼を上げると、バス通りには不規則な桜のトンネルができていた。時折この時期に見に行く病院の裏の桜の林までは、歩くと結構な距離があるのだけれど、私はフラフラと桜に誘われて、そちらの方へ歩き出してしまった。病院は皆古くからあるものばかりだが、最近は建替え工事が進んでいる。建替えられても桜はそのまま残されているものが多く、病院街を通り過ぎるだけで結構な花見ができる。それでも気持ちが浮き立ったりしないのは、時折流れてくる消毒液の匂いと、憂うつそうにバスを待っている老人たちに出会うせいかもしれない。

続き………